モバP「志希が風邪を引いた」

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1  ◆Freege5emM [saga]:2016/01/03(日) 17:35:17.73 ID:d/9JR/ulo

※登場キャラ 一ノ瀬志希 
※短め 

SSWiki : ss.vip2ch.com/jmp/1451810117

2 : ◆Freege5emM [saga]:2016/01/03(日) 17:36:05.53 ID:d/9JR/ulo

 

「ほら、志希。おかゆ作ったから。何か食べないと、風邪が治らないぞ」 
「……タバスコは……?」 

ベッドからもぞもぞと聞こえてくる志希の声は、 
いつもの挑発的な軽快さを失い、代わりに退廃的なハスキーさを得ていた。 

「タバスコってお前。風邪引いてる時は、粘膜が弱るんだぞ。 
 生姜効かせておいたから、それで勘弁しろよ」 
「それはショウガオールだよ……あたしが欲しいのは、カプサイシンなの……」 
「しょうがないな」 

おかゆの白く濁った水面に、タバスコの赤く酸っぱい色が数滴滲んだ。 
そんな異色のおかゆをモソモソと舐めているのが、俺の担当アイドルの一人・一ノ瀬志希である。 

志希は今季、アイドルとして大きな飛躍を遂げた。 

アイドル総選挙では、並み居る先輩をごぼう抜きして最上位層に肉薄した。 
CDを出せば、売上ランキングの上位に自分の曲をねじ込んだ。 
事務所のクリスマスイベントでは、シンデレラガールたちを差し置いてメインを務め上げた。 

そんな大活躍の志希だが、今までにない大きな仕事と過密なスケジュールをこなしたせいか、 
今年最後の仕事を終えるとともに、体調を崩してしまった。 

「なんだか……今日のキミはやさしーねぇ……」 
「そりゃ、病人相手だしなぁ。しかもその原因、俺がスケ過密にしたせいだろう?」 

折が良いのか悪いのか、ちょうど俺も仕事納めであったため、 
都内で一人暮らしの志希の家へ、様子を見に行ってみた。 

「俺も一人暮らしだから。体調崩した時の辛さは、分かるつもりだ」 
「……なんかね。心細いんだよね。年の瀬で、ご近所サンもみんな静かになっちゃって。 
 この世界に、あたし一人しかいないんじゃないか、って気分になるんだ。 
 ……だから、キミが来てくれて、ホントに良かった」 

すると、志希は食事も取らずにうんうん唸っていたため、 
俺はスーパーへ行って――東京は年末までお店が開いていて助かった―― 
とりあえずおかゆを作ってやったところだった。 

3 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/03(日) 17:36:16.36 ID:sXqieO96o
ええやん、なんぼなん?
4 : ◆Freege5emM [saga]:2016/01/03(日) 17:36:36.63 ID:d/9JR/ulo

 

「志希ちゃんねぇ、キミとアイドルやってて、気づいたんだけどさ……」 
「ん、何に気づいたんだ」 
「……お仕事は、ギリギリのところまで攻めた方が、オモシロイよね?」 

志希はスプーンをぺろりと一舐めして、悪びれもなく笑った。 

「スケ見たら、年末年始は録画で、お休みだったからさ…… 
 クリスマスまで持てばいいや~って思って、ガンガン飛ばしちゃったんだー。どうだった?」 
「……いい仕事してくれたのは、伝わったが」 

「うんうん、だから~、今こうなっちゃってるのも、志希ちゃんの計算通り、ってなワケでー……」 
「なぁ、俺帰っていいか? 大掃除まだなんだよ」 
「うぇーん、プロデューサーの薄情者ー、 
 この一年キミに尽くしてきたあたしに……そんな仕打ちがあるかーっ」 
「身から出た錆は自分で落とせ」 

志希がこうして勝手な理屈をこねだすと、スカウトしたばかりのことを思い出す。 

「体がこんなになっても、いいやって、仕事に打ち込めたのは、 
 キミがお世話してくれると思ったからー。だから特別だよ? トクベツ♪ 良い響きだよねぇ……」 
「はいはい、一ノ瀬サンは特別なアイドルですよ、と」 

今でこそ一端のアイドル面している志希だが、 
最初の頃は仕事中に失踪したり居眠りしたり、事務所屈指の問題児であった。 

「ふぅああっ……おかゆー、おいしかったよー。 
 んー、お腹がふくれたから、ねむくなってきちゃったなぁ……」 
「こらこら、寝る前に着替えて体を拭け。俺はタオルを用意しておくから、服とってこい」 

志希が俺に見せる生活能力の低さを考えると、 
本当にこいつ一人暮らしできているのか? 
という疑問がしばしば湧いて来る。 

他人がいなければちゃんとやる、という人もいるから、その種なのか。 
そういえば、同僚の双葉杏も常識はずれの怠惰さだが、 
それでも――諸星きらりの世話になりつつ、だが――なんとか一人暮らしを維持していた。 

「ぶー、プロデューサー? 今、ほかの子のこと考えてたでしょ」 

志希が俺の服をくいくいと引っ張ってきた。 

「よく分かったなぁ。さすがの鋭い観察力だ。ユッコや都がうらやましがるぞ」 
「ナニその言い方、わざと? もーやだ、ふて寝しちゃうもん」 
「はいはい、今お湯を沸かしてくるから。着替え出しておけよ」 

5 : ◆Freege5emM [saga]:2016/01/03(日) 17:37:10.70 ID:d/9JR/ulo

 

俺が、台所で洗面器のお湯やタオルを用意してから部屋に戻ると、 
志希はベッドの上で着替えを広げていた。 

「ねーねー……プロデューサーは、どの下着がお好みかな?」 

俺は、洗面器のお湯をぶちまけてやりたくなる衝動を、やっとの思いで自制した。 

「最近、分別がついてきた……と思ったら、お前は」 
「えー、キミだって、一人暮らしの弱ってるオンナノコの元に押しかけて、 
 世話焼いてくれてる……ってことは、こーゆー役得、期待してるでしょ……」 

俺は志希の問いを否定しなかった。 
すると志希は『これぞ、プロデューサーと担当アイドルの以心伝心っ』とか言い出した。 
嫌な以心伝心だ。 

「ふっふー……今の志希ちゃんは、弱っちゃってるから、 
 襲われちゃっても、逃げも隠れも抵抗もできないよー……」 

志希の胡乱な眼差しも、汗ばんだ肌も、好き放題に波立つ長髪も、 
そういう気怠さを纏った志希は、いつもより艶めかしかった。 

「はいはい。いいから、志希は早く風邪治せって」 
「もー、紳士ぶってるんじゃないよー。キミから生唾の匂いがしたぞー。 
 あたしには、キミの下心なんてお見通しなんだー」 

だが相手は病人だ。 

「別に俺はシてもいいけど、お前、色々な意味で具合良くないじゃないか。 
 ほら、人間は体調が悪いと、まず粘膜が荒れるだろう?」 
「……キミのそーゆー明け透けな言い方、キライじゃないよ」 

艶っぽい雰囲気を思いっきりぶち壊してやると、志希は呆れて微笑した。 

6 : ◆Freege5emM [saga]:2016/01/03(日) 17:37:42.91 ID:d/9JR/ulo

 

「特別扱いってのは、居心地の悪い時もあるね……」 

湯気の立つタオルに顔を埋めながら、志希がつぶやく。 

「みんなと同じな方が、気がラクってコトも、結構多いし……。 
 アイドルになる前は、あたし、そーゆー見られ方に疲れててさ」 

事務所では、志希はいつもニヤニヤと妖しい笑いを浮かべ、俺や一部のアイドルを翻弄してくる。 
ステージでは、志希はいつもキラキラと眩しい光線をまとい、俺やライブに詰めかけたファンを魅了してくる。 

アイドルになる前の志希は、よく知らない。 
ただ、10代の内に向こうの大学を飛び級で出てしまった、ということだから、 
相当デキるヤツだったことは間違いない。 

となると、常人では味わえない気苦労とかもあったんだろう。 

「でも、キミと一緒にアイドルしてるうちに、 
 特別も悪くないかな、って思えるようになってきたんだ」 
「……そうか」 

俺が相槌を打った瞬間、 
志希は『してやったり』と大書された笑顔を満面に浮かべた。 

7 : ◆Freege5emM [saga]:2016/01/03(日) 17:38:13.92 ID:d/9JR/ulo
 

「特別……そういえば、この間のお仕事も、クリスマスって特別な夜を 
 メインで引っ張る特別な大役だったねぇ。それも、特別なキミと一緒に…… 
 だから、志希ちゃん、ちょっとやり過ぎちゃった。なーんて♪」 

「……って言えば、今回の無茶も許してくれる?」 
「ダメ」 
「えぇーっ」 
「というか、無茶って自分で言って……やっぱり確信的にやったのかよ」 

志希は目をギュッとつむって、熱で火照った頬を膨らませた。 
おとなしくして、早く体を良くしてもらわなきゃならんのに。 

さて、どうしたものか。 

「なぁ、志希」 
「……ナニさ」 

志希は、薄目を開けて俺をうかがってくる。 

「大晦日、二人で年越しそば食って、元旦に餅焼いて食おう。 
 食休みが終わったら、電車に乗って、花園へ初詣に行こう」 
「花園って……新宿の? それなら、ご同業のヒトたちにも、たくさん見られちゃうね……♪」 

志希の笑みは、事務所でも見せてくれるニヤニヤ顔。 

「それがお望みだろう? 特別な日に、特別な場所で――だから、風邪直しておけよ」 
「……ふっふー♪」 

その頬は、さっき振りかけたタバスコに負けないぐらい赤かった。 

(おしまい) 

9 : ◆Freege5emM [saga]:2016/01/03(日) 17:39:33.88 ID:d/9JR/ulo

●過去作(志希) 今回とつながりはないですが、よろしければ 

一ノ瀬志希「キミに惚れ薬を試してみたい」 
ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1417352906/ 

志希「プロデューサーと、つきあうんじゃなかったかなぁ?」文香「……」 
ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1417855904/ 

志希「プロデューサーのキモチ、分からなくなっちゃった」マキノ「……」 
ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1417937646/ 

志希「アイドル辞めちゃったら、どうしようかなー」泰葉「えっ」 
ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1418996279/ 

一ノ瀬志希「桜のじゅうたんで見た、シンデレラの夢」 
ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1428745205/ 

一ノ瀬志希の代償【R-18】 
ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1430839426/ 

志希「ねーねーフレちゃーん」フレデリカ「うーん?」 
ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1431840070/ 

周子「5月30日は」フレデリカ「シキちゃんのお誕生日♪」 
ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1432396180/ 

一ノ瀬志希「ねぇ」【モバマス】 
ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1432912085/ 

一ノ瀬志希・誕生日の葛藤 ※R-18 
ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1433090348/ 

志希「今日はシューコちゃんのニオイで過ごす」周子「えっ」 
ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1433688581/ 

一ノ瀬志希の占有【R-18】 
ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1435507873/ 

文香「もしも美嘉さんが」志希「あたし達のおねえちゃんだったら!」 
ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1436714850/ 

文香「包容力が欲しい?」志希「うん!」美嘉(えっ?) 
ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1439724231/ 

一ノ瀬志希「存在の耐えられない軽さ」【R-18】 
ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1438519272/ 

周子「君と一緒に」志希「またひとつ夢描く」 
ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1439715284/ 

志希「あたしのヒミツ?」フレデリカ「暴露しちゃうぞ♪」 
ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1446969140/ 

志希「ねぇ、助手くーん」晶葉「Pは私の助手なんだぞ!?」※百合注意 
ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1448296521/ 

10 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/03(日) 17:43:26.05 ID:ygd+N7juo
乙乙
11 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/03(日) 17:47:33.62 ID:YR5ob47rO
12 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/03(日) 18:45:41.03 ID:B6JfxcaBo
よかった 
おつ
13 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/04(月) 19:49:59.18 ID:TBzSnD5I0
乙です
記事元:ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1451810117/